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懐中電燈だけで入る「雷霆の湯」 (11月6日泊)
─────────────────── 午後4時、番犬プーに「散歩に行くかい?」と声をかけたら、小躍りして喜んだ。よほど退屈をもてあましていたようだ。小一時間、プーを連れ立って戸外の空気を楽しんだ。 午後7時48分、「雷霆(らいてい)の湯」へ向かう。懐中電燈の明かりを頼りに、黄や赤の落葉を踏みしめながら、つづら折りの小道を行く。突き当たりが湯小屋だ。人口照明はまったくない。真っ暗闇の中で懐中電燈の明かりだけが、視線の行方を照らしていた。体を洗い、湯舟につかる。この風呂は底が浅いので体を伸ばすと、ちょうどからだ全体が湯にひたる。 ![]() カーテンを引くと、客室は対岸の紅葉のなかに浮かんでいた 2000/11/7 09:47 闇の中に瀬音だけが聞こえている。大の字に近い格好で、頭上の木々などを眺めていると目が慣れてきた。3、4分もすると、鹿股川の景色がおぼろげながら闇の中に浮かび上がってきた。湯煙が湯舟に舞っていた。体が温まってきた。湯舟から体を乗り出してみると、ひんやりとした鹿股川の空気を感じた。 上流のかすかな“景色”に目を凝らしながら、月の光りで撮影した石川賢治氏の写真集「月光浴」を思い出していた。
この闇の自然の“演出”といい、ロケーションといい、柏屋旅館のワイルド(野性的)な露天風呂を代表する魅力が、この湯舟には確かにある。今度は、光りが闇に溶け込む夕刻か、あるいは闇を突いて光りが満ち溢れてゆく早暁に入ってみたくなった。(2000.11.7) ![]() 旅館近くの散歩道で出合った美しいモミジの黄葉 やや明るめに撮影 2000/11/7 11:33 |