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ある日の「柏屋」
湯ゆー湯ゆー気分! |
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自然ゆたか、野趣に富む野天風呂(6月28日泊)
──────────────────── この日は、塩谷町から「県民の森」経由で塩の湯を目指した。首都圏ではここニ三日、連日30度を越える真夏日が続いている。県民の森へ入ると、ひんやりとした空気が流れていた。梅雨空だが、たいへん明るい。日の光りが山の稜線を浮かび上がらせている。「全国植樹祭会場」を過ぎると、道は下りになる。やがて、矢板からの道との合流地点を左折し、県道56号線(下塩原矢板線)を塩の湯方面へ。
八方自然休養林を抜ける。木々の色合いはちょうど今頃、新緑から色鮮やかな緑へ移るらしく、美しい。パノラミックな紅葉の名所を通り過ぎる。秋が待ち遠しい。青空がのぞく。午後6時2分、柏屋旅館に到着。プーが退屈そうな目を開けて出迎えてくれた。 午後8時頃、館内風呂へ行く。よく磨き込まれた大浴場の石床の感触が素足に心地よい。大きな湯舟に一人のびのびと浸かる。部屋に戻り、しばらくすると体が少しほてってきた。温泉成分がじんわりと体に染みとおってきたようだ。 翌早朝、雷雨になった。光りが走り、雷が鳴った。7時少し前、雷雨は去り、霧が流れ、空は明るくなった。谷間には、雨後の涼しい風がゆったりと流れはじめた。午前8時28分、宿と鹿股川対岸の間の空中には、たくさんの虫たちが飛びはじめた。川上から川下に向って、まるで“出勤”しているかのような赤とんぼたちの朝の光景。毎年、真夏の塩の湯の虫の多さには驚かされる。自然が多く残っているということはこういうことなのだが、現代人はこれまで、そうした視点を見失ってきたのかもしれない。
午前9時過ぎ、一番人気の野天風呂「雷霆(らいてい)の湯」へ向う。木々や草の葉には滴が、朝の光りに輝いていた。湯小屋の手前の小道で、日の光りが草花をスポットライトのように照らしていた。湯小屋の木枠ごしにのぞく上流の景色がなかなかおしゃれだ。この時期めずらしく、湯けむりが舞い上がっていた。空気がひんやりしている。
宿日記「ある日の『柏屋』湯ゆー湯ゆー気分」最初熱く感じたが、入ってみるとちょうどよい湯加減だった。「ガーッ」という川音が気持ちをリラックスさせる。雷雨の影響だろう、湯舟に木の葉が何枚も舞い込んでいる。露天風呂は毎日清掃されているのだが、気象の変化に手際よく、こと細かにすべて対応し切るというわけにもいかない。野天風呂の情緒を楽しむ心 とは、ある意味でそうした自然の変化を受け止め、許容し、愛でる心に生まれ育ってゆくものなのかもしれない。野天の野性味を楽しむ寛容さとでも言おうか。鹿股川の借景もさることながら、舞いこんでくる木の葉一枚にも詩心が生まれる、そんな野趣に富んだ味わいがこの風呂には確かにあると思った。今まで出合えなかった新しい雷霆の湯を発見したような気がした。 帰り道、桐の湯入口の階段のそばで、ユキノシタが白い花を付けていた。(010628 泊)
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